Mattermost 記事まとめ: https://blog.kaakaa.dev/tags/mattermost/
本記事について
Mattermost の統合機能アドベントカレンダーの第 24 日目の記事です。
以前から開発に参加しているMatterpollが Mattermost 公式の Plugin Marketplace で Community Plugin として公開されました。
昨日までの記事で Matterpoll Plugin の Server 側・Webapp 側の実装について紹介しましたが、本日の記事では Matterpoll Plugin のテストや CI などの開発周りの話を紹介します。
Mattermost Plugin のテスト
Server 側のテスト
Mattermost Plugin の Server 側の機能を Mattermost を実際に起動することなくテストするには、plugintest
パッケージを使用します。
plugintest
パッケージを使用してテストを記述していく方法について、Mattermost 本体にあるプラグインテストのサンプルコードを元に紹介します。Matterpoll プラグインも大部分はこれと同じ方式でテストが記述されています。
...
type HelloUserPlugin struct {
plugin.MattermostPlugin
}
func (p *HelloUserPlugin) ServeHTTP(context *plugin.Context, w http.ResponseWriter, r *http.Request) {
userID := r.Header.Get("Mattermost-User-Id")
user, err := p.API.GetUser(userID)
if err != nil {
w.WriteHeader(http.StatusBadRequest)
p.API.LogError(err.Error())
return
}
fmt.Fprintf(w, "Welcome back, %s!", user.Username)
}
...
Mattermost プラグインの本体は、plugin.MattermostPlugin
が embedded された構造体です。ここでは、HelloUserPlugin
構造体がそれにあたります。この構造体を通じてプラグイン用の API を実行したり、Hook となるメソッドを実装したりすることで、サーバー側の動作を定義することができます。HelloUserPlugin
では、プラグイン独自のエンドポイントを追加する ServeHTTP
Hooks が実装され、その処理の中で GetUser
API を実行してエンドポイントへアクセスしたユーザーの情報を取得し、そのユーザー名をレスポンスとして返しています。
このServeHTTP
Hooks をテストする場合、単にHelloUserPlugin
構造体を生成してServeHTTP
メソッドを実行しただけだと、プラグイン API (GetUser
) の実行部分で実際の Mattermost サーバーの機能を呼び出そうとしてしまいエラーとなってしまいます。
user, err := p.API.GetUser(userID)
HelloUserPlugin
の API
フィールドは、plugin.MattermostPlugin
構造体が持っていたフィールドであり、このフィールドを通して呼び出されるメソッドは Mattermost サーバーの処理に依存しているからです。Mattermost サーバーがない状態でテストを実行する場合、このAPI
フィールドを入れ替える必要があります。
ここで、プラグイン用のテストメソッドとして定義されている Example
メソッドをみてみましょう。
...
func Example() {
t := &testing.T{}
user :&model.User{ ... (1)
Id: model.NewId(),
Username: "billybob",
}
api := &plugintest.API{} ... (2)
api.On("GetUser", user.Id).Return(user, nil) ... (3)
defer api.AssertExpectations(t) ... (4)
helpers := &plugintest.Helpers{}
defer helpers.AssertExpectations(t)
p := &HelloUserPlugin{}
p.SetAPI(api) ... (5)
p.SetHelpers(helpers)
w := httptest.NewRecorder()
r := httptest.NewRequest("GET", "/", nil)
r.Header.Add("Mattermost-User-Id", user.Id)
p.ServeHTTP(&plugin.Context{}, w, r) ... (6)
body, err := ioutil.ReadAll(w.Result().Body)
require.NoError(t, err)
assert.Equal(t, "Welcome back, billybob!", string(body))
}
**(2)**で plugintest.API
という構造体のインスタンスを生成し、生成されたインスタンスをテスト対象のプラグイン構造体 HelloUserPlugin
へ SetAPI
関数を通じてセット (5) しています。 plugintest.API
自体は、そのままでは何も処理を行わないため、api.On
で特定の引数が与えられた時の処理をテスト側で実装しています (3)。
...
user :&model.User{ ... (1)
Id: model.NewId(),
Username: "billybob",
}
...
api.On("GetUser", user.Id).Return(user, nil) ... (3)
defer api.AssertExpectations(t) ... (4)
...
上記のコードの場合、user.Id
を引数として GetUser
メソッドが呼び出された場合に (1) で定義された user
を返却するようモックを定義しています。また、defer api.AssertExpectations(t)
(4) を書いておくことで、テスト実行が終了した時に api.On
で定義したモックが実行されていなかった場合にテストを失敗させることができます。
HelloUserPlugin
では Helpers
関数を利用していませんでしたが、Helpers
のメソッドを利用している場合も API
と同様に関数をモックすることができます。
最後に httptest
パッケージを使って ServeHTTP
Hook を呼び出し、レスポンスが想定通りであることをチェックしています。
w := httptest.NewRecorder()
r := httptest.NewRequest("GET", "/", nil)
r.Header.Add("Mattermost-User-Id", user.Id)
p.ServeHTTP(&plugin.Context{}, w, r) ... (6)
このように plugintest
パッケージを使うことで 、Mattermost サーバーがない状況でも Mattermost プラグインの処理をテストできるようになります。あとは、とにかくパターンを網羅するケースを書き出すだけです。筋力です。
Server 側のテスト(Store)
Matterpoll では Mattermost Plugin の Key Value ストアへのアクセスを抽象化した store
パッケージを用意しています。テスト対象のメソッド内で Key Value ストアへのアクセスが必要な処理があった場合、プラグイン API の KVSet
、KVGet
などのメソッドを plugintest
パッケージでモックすることも可能ですが、テスト記述が煩雑になるため、Matterpoll では vektra/mockery を使って store.Store
インタフェースからモックを生成してテストを記述しています。この vektra/mockery は、Mattermost 本体の plugintest
パッケージを生成するのにも使われているものです。
Webapp 側のテスト
ここについては、Mattermost Plugin 特有のトピックというものはなく、開発した React Component に対してJest
を使った snapshot テストを実装しています。
CI
CI は CircleCI を使っており、Mattermost プラグイン用の CircleCI Orb を使って lint / build/ coverage / deploy を行っています。
https://github.com/matterpoll/matterpoll/blob/master/.circleci/config.yml
カバレッジは Codecov による PR へのコメントフィードバックを実施しています。
Checks
静的解析系のツールは Mattermost プラグインのテンプレートリポジトリ mattermost/mattermost-plugin-starter-template: Build scripts and templates for writing Mattermost plugins. で定義されているものとベースは同じで、採用している linter やルールが少し異なるという感じです。
サーバー側は golangci-lint を使っており設定ファイルは下記の通りです。
run:
timeout: 5m
modules-download-mode: readonly
linters-settings:
goconst:
min-len: 2
min-occurrences: 2
gofmt:
simplify: true
goimports:
local-prefixes: github.com/matterpoll/matterpoll
golint:
min-confidence: 0.0
govet:
check-shadowing: true
enable-all: true
misspell:
locale: US
maligned:
suggest-new: true
linters:
disable-all: true
enable:
- bodyclose
- deadcode
- dogsled
- errcheck
- goconst
- gocritic
- gofmt
- goimports
- golint
- gosec
- gosimple
- govet
- ineffassign
- interfacer
- maligned
- misspell
- nakedret
- scopelint
- staticcheck
- structcheck
- stylecheck
- typecheck
- unconvert
- unparam
- unused
- varcheck
- whitespace
issues:
exclude-rules:
# Exclude some linters from running on tests files.
- path: _test\.go
linters:
- dupl
- goconst
- scopelint # https://github.com/kyoh86/scopelint/issues/4
https://github.com/matterpoll/matterpoll/blob/d4ffdbfd6dcdea359b7419e0baa3ab8aaa32e420/.golangci.yml
クライアント側は ESLint を使っており、設定ファイルは下記の通りです。(長いためリンク先参照)
翻訳
Matterpoll のメッセージは翻訳可能な形式で管理されており、現在、下記の言語が利用可能です。
- English
- France
- German
- Japanese
- Korean
- Polish
- Simplified Chinese
- Spanish
- Traditional Chinese
言語の切り替えは、Mattermost 本体の設定に応じて実施されます。
Mattermost Plugin における翻訳処理の詳細については、Matterpoll の共同開発者である Hanzei による下記の記事で紹介されています。
https://developers.mattermost.com/blog/localizing-matterpoll/
Server 側の翻訳
Server 側の翻訳機能はgo-i18nを使用しています。
翻訳対象のメッセージは、コード上では以下のようにgo-i18n
のi18n
パッケージの構造体として書かれています。
...
HelpText: p.LocalizeWithConfig(l, &i18n.LocalizeConfig{
DefaultMessage: &i18n.Message{
ID: "dialog.createPoll.setting.multi",
Other: "The number of options that an user can vote on.",
}}),
...
実際の翻訳を行う場合は、go-i18n
のコマンドラインツールを使って、上記のようなi18n
の構造体として宣言されたメッセージを json ファイルに集約します。その辺りの手順については以下のドキュメントにまとめられています。
https://github.com/matterpoll/matterpoll/blob/master/CONTRIBUTING.md#translating-strings
go-i18n
によって集約されたメッセージを各国のコントリビュータにローカライズしてもらうことで、翻訳されたメッセージが表示されるようになっています。
https://github.com/matterpoll/matterpoll/tree/45f095875a98fb1d4f3f166851c86f41b987493e/assets/i18n
Webapp 側の翻訳
Matterpoll Plugin では、まだ Webapp 側の翻訳機能は実装されていませんが、Mattermost Plugin の機能としては実装できるようになっています。
Webapp 側の翻訳は、react-intl
を使用しています。
...
import {FormattedMessage} from 'react-intl';
...
<FormattedMessage
id='rootModal.message'
defaultMessage='Root Modal2'
/>
...
上記のようにコード内で使用されている翻訳対象のメッセージは、make i18n-extract
で集約することができます。
...
## Extract strings for translation from the source code.
.PHONY: i18n-extract
i18n-extract:
ifneq ($(HAS_WEBAPP),)
ifeq ($(HAS_MM_UTILITIES),)
@echo "You must clone github.com/mattermost/mattermost-utilities repo in .. to use this command"
else
cd $(MM_UTILITIES_DIR) && npm install && npm run babel && node mmjstool/build/index.js i18n extract-webapp --webapp-dir $(PWD)/webapp
endif
endif
...
https://github.com/matterpoll/matterpoll/blob/master/Makefile#L205
集約されたメッセージファイルを Mattermost Webapp Plugin API のregisterTranslations
で登録することで、Webapp 側のメッセージの翻訳ができるようになります。
さいごに
本日は、Matterpoll Plugin のテストや CI などの開発に関する事柄について紹介しました。 Mattermost Integractions に関する紹介は本日の記事で終了です。
明日は、本記事を執筆する中で見つかった問題に対する Issue/PR について紹介します。